ロブ・ライナー
大好きな映画監督の名を、こんな形のニュースで目にすることになるとは思っていなかった。
ロブ・ライナーの自宅で、二人の遺体が発見されたという速報を見たところだ。その遺体はロブ・ライナー本人と、彼の奥さんだったそうだ(現段階では息子が容疑をかけられているとのことで)。。。
「強盗殺人課が捜査にあたっている」という一文に、重たい気持ちにさせられる。
事情などの事件の詳細はこれからまた明確になっていくのだろうけれど…なんてことだ。
映画を撮る人は、作品の中では何度も人を死なせる。
でも、現実がその名前に触れてくる瞬間は、まったく別の質量だ。
画面越しに知っているはずの人物が、急にこちら側に倒れ込んでくるような感覚があるというか、壊れないと思っていた壁が壊されたような、辛い気持ちにさせられる。
ロブ・ライナーと聞いて、多くの人がまず思い浮かべるのは
やはり『スタンド・バイ・ミー』だと思う。
今年も、僕はこの映画に触れていた。
あの空気が身体の奥に残りすぎて、
ベン・E・キングの名曲を、その時カバーしたけれど。
線路の上を歩く少年たち。
死体探しというスティーヴン・キングの小説を扱いながら、独自の解釈を映像化していった。
ロブ・ライナーが強調させたのは、死や冒険だけでなく、終わってしまう時間そのものだと思った。
でも子ども時代は、終わる瞬間を自覚しない。
大人になってから観ると、少年たちの自由奔放さの中に、環境、社会、競争、成長によってその純真さの形が少しずつ変わっていく様子が見てとれる。
そうやって、人は自分が傷付かないように、成長せざるを得なくなるんだ。
信頼も、疑いも、自己防衛のためのアイテムにしながら、すべてのカットが「もう戻らない」という事実に向かって進んでいく。
映画は説明しすぎず、感情を押しつけず、
それでも確実に、観る者の記憶と結びついてしまう作品だった。
でも、ロブ・ライナーの良さは、
この一本の名作に回収されるようなものではない。
子供から少年へ移ろいゆくスタンド・バイ・ミーとは全く別角度から、青年から大人へ向かう中での夢や人間関係を描いた映画がある。
僕の中で、コメディ映画の個人的ランキングを作るなら、
確実にトップ3に入るのが、ロブライナー監督作品の「スパイナル・タップ」。
これは本当に素晴らしいコメディ映画で、
同時に、よく音楽を知っている人のユーモアに溢れている。
音楽を愛し、真剣で、プライドが高く、夢に突き進むおバカさがある。
本人たちは一度もふざけていないのに、
観ている側だけが笑ってしまう。
音楽に関わる人間なら、
「こういう人いる 笑」と思う瞬間が必ずある。
笑いながら、人間を俯瞰している様々なカットにとても強い洞察力を感じる。
今回の事件の詳細は、まだわからない。
ただひとつ確かなのは、ロブ・ライナーという名前が、
僕の人生のいくつかの場面に、確実に居座っているということだ。
少年時代の終わりを教えてくれた映画と、
真面目さと愚かさをここまで美しく笑わせにかかった映画。
その両方を撮った人がいる、という事実だけで、映画というものはやはり侮れない。
二つの映画は結局のところ、「さあ、どう生きようか」をそれぞれ全く異なる色でもって、僕に伝えてくれたものだった。
ニュースは現実に起きたことを伝える。
映画は、それにどう対処するかを提唱する。
今日、その二つが思いがけず重なった。
今はただ、あまり言葉が見つからないが…
「安らかに」も何か違うし、「お悔やみを」を伝える人もいない。
「ご冥福を」なんて仏教用語なのでおそらくそうではないであろう人に伝えるのは失礼になるだろうし…
ただただショックだとしか言えない。